繍巧塾 詳細
近年、日本文化の見直しとともに、京都文化と「和」に対する再評価が高まりつつありますが、それを「伝える側」と「受け止める側」とをつなぐ機会が随分少なくなってきていると思われます。私共、京繡の世界も同じ状況です。
京繡の技術もさることながら、制作意欲を高揚させる日本文化に対しての理解が、京繡の伝統を連綿と受け継ぐ土台になると考えています。
京繡という日本の伝統工芸に携わり、それを受け継ぐものとして、学びたいという意欲に私共は応えていきたいと考えております。
「長艸繡工房」が運営するこの繡巧塾では、京繡の実際的な仕事に触れながら、茶道、長唄、能楽といった伝統芸能も学びながら、それらに関わる和装文化を総合的に学びます。
単に技術の習得の場ではなく、多角的に日本文化への見識を深め、豊かな感性を磨く事を目的とし、広く塾生を募集いたします。
概要
期間:原則三年間
時間:月〜土 9時−18時(日曜、祝日、第二土曜は休日)
内容:京繍の技法修得をはじめ、日本文化の体験、きものの着付けなど
講師:長艸 敏明 作品制作指導、伝統芸能習得指導など
長艸 純恵 京繡基礎実技、着物着こなし指導、礼儀作法、所作、作品扱い指導など
他、講義やお稽古にそれぞれの専門の先生方に来ていただいております。
篠笛・茶道・書道のお稽古が入塾中の勉強に含まれています。
※学校法人ではありませんので修了後に学士などの資格を貰えるわけではありません
※古来よりの弟子入りに近い形の指導となります。
学校のように時間割があるわけでは無く、教科書や参考書もありません。
現場に入って、様々な基礎知識を学んでいただきます。
※学生保険を希望されます方は、各自で入っていただきますようお願いいたします。
※必要に応じて在学証明等は発行可能です。
※女子寮完備
三年間のスケジュール
1年次
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実際の職人の仕事から接客まで実務に接し、 京繡の制作過程
(着物、屏風、和装小物、文化財修復、創作作品等)を学ぶ。
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きものの着付の習得
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美術用の基礎知識 日本美術史、西洋美術史等の基礎
2年次
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茶道、篠笛のお稽古を通じて伝統芸能、文化を実践的に習熟する。
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刺繡基礎(糸縒り、図案の書き方等)
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場合によって進路指導、職業指導
3年次
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日常における礼儀作法、所作、きものの扱いなど一般常識を習得
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京繡の技術習得
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卒業制作 図案作成から刺繍まで自身で行う
※卒業後は、工房に職人として入門することも可能です。在塾中には、卒業後の進路について相談する時間を多く設けています。
京繡の伝統工芸士を目指される方へ
伝統工芸士になるには 産地委員会を通じて受験申請を行い、(財)伝統的工芸品産業振興協会が実施する伝統工芸士試験に合格することが必要です。受験資格として、経済産業大臣指定伝統的工芸品の製造に現在も直接従事し、試験実施年度の4月1日現在12年以上の実務経験年数を有し、原則として産地内に居住していることが条件となっています。試験は知識試験と実技試験により審査されますが、12月中旬の合格通知後、産地委員会を通じて登録申請を行い伝統工芸士として登録されます。(日本伝統工芸士会HPより 転載)
以上の規定により、塾を卒業後、12年以上の京繡の実務経験と、京都に在住している場合のみ取得することができます。卒業後、故郷に戻る予定の方は、京繡伝統工芸士の資格申請ができなくなります。
伝統工芸士の資格を取得しなくても、京繡の職人として仕事をしていくことは可能です。
塾生の生活について
・職人と同じ生活スケジュールに加え 様々なお稽古や指導、講義やイベントなどがあります。
・場合によって、休日に能楽鑑賞や講義などもあり、 入塾中の全ての生活が修行中とお考えください。
・在塾中は、学ぶことに専念してもらうため、アルバイトは認めておりませんので、働きながら学費を貯めることは不可能だとお考えください。
塾生の休日の楽しみ方(実際の例)
・学生時代にしていた楽器演奏の活動を続けるため、京都のアマチュアオーケストラに参加しコンサート出演
・趣味のバイクで休日はツーリング
・京都のお寺の『お祭りのお手伝い募集』広告に応募し衣装を着てお祭りに参加
・食べ歩きをしたりしています
卒業後の進路
・工房(長艸繡巧房)に就職、勤務
・出産・育児を経て在宅にて刺繡の仕事を続ける 等